鬱は個性なり

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zoom RSS 変態、ITシステムの発注に関わる

<<   作成日時 : 2012/07/16 07:52   >>

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変態アドベントカレンダー in Summer(http://atnd.org/events/29918) 2日目(7月16日)です。


2008年夏のこと。
Aさん(上司。課長)「こういう社内システムを発注して開発することにしたので、それを取りまとめて中心になって推進するように」
私(ヒラ)「えっ!(絶句)」(やりたくない。そんなシステム、作っても会社の利益にならないし。)

ということで今回は、ITシステムの発注側の裏事情と、それに関わった私の変態的な立ち回りについてのお話です。
なお、私はIT関係者ではありません。機械メーカーに勤務しています。


私については、
http://red-lemon.at.webry.info/201207/article_1.html
http://red-lemon.at.webry.info/201207/article_2.html
を参照ください。



私「それは・・・私の全工数をそちらに振り向ければ可能です。が。いま担当している本業に一切、手を付ける余裕が無くなります。工数的に無理です」
Aさん「Bさん(後述)の直々の指名だから。工数のことは、そのうちBさんがなんとかしてくれるだろう」
私「じゃあ、やってみます」

引き受けちゃいました。
BさんというのはAさんの上司で、○○長という肩書きを持つ、私の組織のトップ。
そこそこ大規模な私の会社において、○○長というのは、中小企業における社長並みの意味と権力を持ちます。

どんなシステムを発注するのでしょうか。以下に前提条件をまとめました。

【期間】2008年度内に稟議書を作成、承認を受け、2009年度末までに完成。
【予算】8000万円くらい。
【目的】とある費用が増大しているので、その費用を低減する。
    今回開発するシステムで(全世界に拠点がある)弊社グループ全体のその費用をリアルタイムで集計する。
    それにより、早期に費用の増大を検知し、その原因を分析し、対策を講じることを可能にする。


【裏事情や関連事項】
・私の所属する○○という部門は、2008年度(4月)に組織変更があり、○○部から1段階格上げされるという形で発足した。(人員・担当業務は元のまま)
・Bさんは○○部門の長として、2008年度(4月)に着任した。以前は他部門の長をしていた。
・Bさんは○○部門の発足1年目として、『何か会社に貢献しそうな構想をブチ挙げなければ』というプレッシャーにさらされている。
・時を同じくして2008年度(4月)に、全社のITシステムを統括する部門(以後、X部門と呼ぶ)が発足した。
・X部門の仕事は、各部門が個別に開発・運用している社内システムを全社的な観点で統廃合していくこと。
 また、新規システムの発注案件について、当該部門のサポート・コーディネートをすること。
・X部門は、社内や社長に存在をアピールしたい。そのための、分かりやすい案件がほしい。
・社内システムの開発は、グループ会社であるY社に発注することが多い。Y社はITシステム・ソフトウェアの開発を専門とする会社。
・2008年秋、リーマンショック勃発。今後の投資案件は廃止・延期・減額されるのが世界的な趨勢となる。
・当然のことながら、類似のシステムはすでにある。
 ただし、データを入手するタイミングや経路が統一されてはいない。
 月次ごとのデータ入手であったり、経路がメール添付による送信や海外拠点のシステムへの定期的なアクセスだったり。
 また、常に自動的にデータ収集するようになっておらず、手動(人力)での収集のため、工数がかかっている。
・データは年間数万件。1件の項目数は30項目程度。
・Bさんはこの社内システムの開発について社長に口頭での説明をしており、発注の内諾は得ている。


【私の見解】
・この社内システムが理想どおりに完成しても、低減するべき『とある費用』は、低減できない。
・とある費用が増大しているのは、『費用をリアルタイムで集計できない』ことが理由ではないから。
 理由は『その原因を分析し、対策を講じる』ことができないから。その能力が無いから。
 したがって、『早期に費用の増大を検知する』ことができても、その費用の増大を防止することができない。
・現行のシステムは古いものの、『素(す)のデータ』をいつでも抽出して取り出せるようになっている。
 データを処理(加工)し、分析できるITスキルが無いだけ。
 つまり、システムの問題ではなくて、人の能力の問題。

・作る価値は無い。それでも、メンツその他のしがらみで、どうしてもやらねばならないとすれば・・・

・要求されるシステムを真剣に作るならば、8000万円では足りない。倍くらいかかりそう。
 期間も、1年間では苦しい。やはり、倍くらいかかりそう。
 基盤となる部分、根幹部分はこの予算と期間でできるだろう。
・これは、表向きは『1年間、8000万円』だが、実際は『2年間、1億6000万円』で進めないと無理な案件だ。
 追加の予算と期間は、次の年度に『システムの修正』という名目で、申請すればいいや。
・木で例えるなら、根っこと幹の部分だけは、1年間でしっかりとしたものに仕上げよう。
 枝や葉は、後からで良い。
 『どのようなデータを』「どのような形式で』『どのタイミングで』収集し、保持するか。
 が、根っこと幹の部分だろう。
・後からの拡張がきちんとできるシステムにすること。
・拡張ができるための余裕を多すぎず少なすぎず、適切に確保しておくべき。
・ITシステムを建築物に例えるなら、敷地は広くとり、建坪も余裕を見るべき。
 大黒柱と動線の確保はしっかりと。間取りや内装はどうでも良い。
 後からどうにでもなる。それよりも、早期に仮住まいが開始できることが大切。

・リーマンショックの影響で、投資案件が軒並み削られている。
 このままだとY社が潰れかねない。
 Y社が潰れると、うちの会社の多数のシステムの維持・管理や新規開発ができなくなる。
 これは長期的には、うちの会社の損失になる。
 この時期をY社が乗りきるために、金銭のサポート(仕事の提供)は必要だ。


・この仕事は私にとって多大な工数を必要とする。
 発注側でシステムの全容を把握している人は必要で、できる限り1人きりであることが望ましい。
 私1人でそれをやり遂げるのは、全力を尽くせばなんとかなるだろう。
 だが、現業務をこなすのにも、私がもう1人必要だ。余力では到底できない。
 私が1人足りない。本当に工数のサポートを、してもらえるのだろうか?


さて、読んでいただけているかどうか不安なほど、グダグダと書き連ねてきましたが、
上記事情に私の変態的解釈が発動され、次のように進めるという方針が決定しました。
誰にも言ってないけど。


【期間】 × 1年間 → ○ 2年間
【予算】 × 8000万円くらい。 → ○ 1億6000万円くらい。
【目的】この案件によってY社が事業量を確保でき、Y社の経営を維持できること。
    システムが完成しようがしまいが、知ったことではない。



さて。それでは、稟議書を書きますか・・・・
稟議書の項目の中に、『効果』という欄がありました。
「こういう効果があり、何年で新システム開発に投じた費用が回収できます」ということを書く欄です。
私は頭をかかえました。Bさんに相談に行きました。

私「新システムができても、費用的な効果はゼロだと思っています。『効果なんて無い』って書いていいですか?」
Bさん「効果が無いことは無いやろー。『過去の案件で総額1億円の費用がかかったものが、もしも新システムができたら早期に低減できるので、類似の事例が発生しても5000万円で済みます』とか。5000万円の効果や」
私「あー、そうですか。そんな感じで良いのですね?」

過去の事例では、費用総額が1億円程度に達するものが1年間に0〜2件程度発生しています。
そこで、
「そういう金額の大きな案件を1年に1件、半減できたとして、2年間で回収できます」と『効果』欄に記入してBさんに意見を求めに行きました。

Bさん「2年間で回収っちゅうのは、早すぎるなー。半減できます、っちゅうのも、言い過ぎやなー。『費用を30%低減できるようになって、3年間で回収できます』というストーリーにならんか?」
私「やってみます」

やってみましたが・・・過去の事例というのは数が限られています。
なので、どんな事例に『費用を30%低減できる』というのを当てはめて足し合わせても、『3年間で回収できます』というストーリーには至りませんでした。

私「3年間で回収できるというストーリーにはできません。費用効果が少し足りません。元々『30%低減できる』という数値には根拠など無いのですから、『40%低減できる』とさせてもらえませんか?」
Bさん「あかんあかん!そんなに効果があるとか書いたら、ウソになる」
私「それでは、『全ての事例について30%低減できる』とするのは、どうでしょう?」
Bさん「あかんあかん!そんなたくさんの事例について対応策を考えて実行できるワケがない。そんなウソあかん。稟議書は、役員さんも見るんやで。そんなツッコまれるようなウソはあかん」
私「そもそも、費用効果があるということ自体が疑問だと思いますが・・・」(冷ややかな目線)
Bさん「そんなことはないよ!分かった。私も案を考えてみる。他の人にも、案を考えさせる」
私「お願いします」

稟議書の提出期限が迫るなか、待てど暮らせど突っつけど、誰からも案は出てきませんでした。

私「稟議書の提出期限は今日なんですが、何か案は出ましたか?」
Bさん「スマン。無い。今日は他の用事がたくさんあって忙しい」
私「ああ、そうですか・・・」

私は「どうでもよいのだな」と判断して、鉛筆をなめました。
マジメに費用効果を計算した数値を『1.15倍して(15%増しにして)』効果とし、稟議書を提出しました。
うちの会社の役員の目が節穴で無ければ、細かいところに疑いを抱いて稟議が通らないハズです。
・・・稟議は通りました。そうですか。



さて。稟議も通り、予算が確保されたので、細かい要件定義に取りかかり始めた2009年の春。

私「そろそろ仕事が回らなくなり始めてるんですが・・・工数を増やす話はどうなってます?」
Aさん(上司。課長)「どうもなってない」
私「Bさん。このままだと工数が足りません。現業務と新システム開発の両方に半分ずつ工数を割り振ることはできません。そんなことをしたら、どちらも全く進まなくなります。新システム開発は放棄できないと思います。現業務はどうするのですか?放っておくのですか?」
Bさん「放っておいたらいいよ」

私「ああ、そうですか」

ここに至って、私はブチ切れました。放っておきました。新システム開発のほうの仕事を。
全力で実力行使して、新システム開発の業務から逃げました。打ち合わせがある日には「腰が痛い」「腹が痛い」「頭が痛い」「用事がある」で会社を休み続けました。
振り切って逃げ切りました。


2010年春。
新システム開発を専任で担当する課が新設されました。
担当する人も総勢4〜5名が(1人ずつではありましたが)増員されました。

私「(兵站の補給が遅きに失している。戦力の逐次投入は最悪の戦術・・・)」

2012年7月現在。
この新システムはまだ、部分的にしか稼働していません。いつ完成するのでしょうか。
X部門は、部門ごと無くなりました。2012年春の組織変更で。
Bさんは2009年4月に、他の部署に異動しました。2012年に定年退職しました。
Bさんの後任で着任したCさんは、2010年4月に、他の部署に異動しました。
Cさんの後任で着任したDさんは、2011年4月に、他の部署に異動しました。
Dさんの後任で着任したEさんは、2012年4月に、他の部署に異動しました。
Aさん(上司。課長)は、今も私の上司のままです。
Y社は無事、存続しています。

以上です。
明日は「うらがみさん(backpaper0さん)」の予定です。
よろしくお願いします。

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